むせんでんしんのきんじょう
無線電信の近状

冒頭文

無線電信というものは一体どうして出来るものかという事は今ここで喋々(ちょうちょう)せずともの事であるが、順序として一応簡単に云ってみれば、発信所で一つ大きな電気の火花を飛ばすとその周囲より空間全体に瀰漫(びまん)するエーテルに一種の波動を起し、この波動はエーテルを伝わって八方に拡がる。その有様は丁度静かな池の面に一つの石を投げ込んだ時、そこから起った波が次第に大きな輪となって拡がって行くようなもの

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月17日

底本

  • 寺田寅彦全集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年11月21日