ねころくだい
猫六題

冒頭文

この頃猫の話が流行(はや)るからここにも少しばかり集めてみる。 猫と三味 三味(さみ)の音(ね)は何処で出るといえば無論三筋の絃(いと)から起るが、絃自身から直接に空気に伝わる音は割合に弱いものである。大部分の音は絃につれて振動する胴に張った皮から空気に伝わる。単に絃を張った皮のみならず裏の皮からも伝わる。それだから三味を弾く時には裏の皮を身体にくっつけては駄目な訳であろう。要するに三味線の

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1908(明治41)年9月1日

底本

  • 寺田寅彦全集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年11月21日