むしぼし
虫干し

冒頭文

海の南風(みなみかぜ)をうけている浜松の夏は、日盛りでもどこか磯風の通う涼しさがありましたが、夜は海の吐き出す熱気(ねっき)のために、却って蒸(むし)暑い時もあるのでした。 そうした夜は寝床にうすべりを敷き、私たちも大人の真似をしてひとしきり肩に濡手拭をあてて寝(やす)む事もあるのでした。けれどそれも八月頃のことで、九月も終り頃からは、朝あけや、夕方の空は、露っぽい蒼さに澄んでくるのでし

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆18 夏
  • 作品社
  • 1984(昭和59)年4月25日