じごくへん
地獄変

冒頭文

一 堀川の大殿樣(おほとのさま)のやうな方は、これまでは固より、後の世には恐らく二人とはいらつしやいますまい。噂に聞きますと、あの方の御誕生になる前には、大威徳明王の御姿が御母君(おんはゝぎみ)の夢枕にお立ちになつたとか申す事でございますが、兎に角御生れつきから、並々の人間とは御違ひになつてゐたやうでございます。でございますから、あの方の爲(な)さいました事には、一つとして私どもの意表に

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 傀儡師
  • 特選名著復刻全集近代文学館、日本近代文学館
  • 1971(昭和46)年5月