きせんのかいりょう
汽船の改良

冒頭文

船に酔わぬ人に云わせると航海ほど愉快なものはない。しかし吾々船に弱い者から見るとこんな厭なものはない。船室に潜り込んだが最後、もう頭が上がらぬ。海上の日の出がどんなに美しかろうが、海鳥が飛ぼうが、鯨がはねようがそんな事はどうでもよい、一刻も早く目的地に上陸して動かぬ地盤が踏みたいと願う。そしてなるべくなら船に乗りたくないと思うが、海国の悲しさには、ちょっと踏み出せば是非とも船でなければならぬ。止む

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1907(明治40)年8月30日

底本

  • 寺田寅彦全集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年11月21日