かやのけんきゅう
蚊帳の研究

冒頭文

自分は蚊帳が嫌いである。しかし蚊に責められるのはそれ以上に嫌いだから仕方なしに毎晩このいやな蚊帳へもぐり込んで我慢している、そしてもう少し暑苦しくない心持のよい蚊帳が出来ぬだろうかと思う。一夜寝ながら色々考えてみた。 第一に蚊帳の内と外とで温度がどれだけ違うだろうかと思って夜中に寒暖計を持って出たり入ったりしてみたが残念ながら大した差はなかった。しかし人体に感ずる暑さは必ずしも寒暖計の示度ばか

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1908(明治41)年8月18日

底本

  • 寺田寅彦全集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年11月21日