ししゃをわらう
死者を嗤う

冒頭文

二三日降り続いた秋雨が止んで、カラリと晴れ渡(わた)った快い朝であった。 江戸川縁(えどがわべり)に住んでいる啓吉(けいきち)は、いつものように十時頃(ごろ)家を出て、東五軒町(ひがしごけんちょう)の停留場へ急いだ。彼(かれ)は雨天の日が致命的(フェータル)に嫌(きらい)であった。従って、こうした秋晴の朝は、今日(きょう)の裡(うち)に何かよい事が自分を待っているような気がして、何となく心がと

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央文學」1918(大正7)年6月号

底本

  • 世界は笑う〈新・ちくま文学の森13〉
  • 筑摩書房
  • 1995(平成7)年9月25日