よにでるぜんご
世に出る前後

冒頭文

「雄辯」から、僕の自叙伝を求められたが、僕には既に「文藝春秋」に半歳に亙つて連載され、其後、平凡社から出た、僕の全集の中に収録されてゐる「半自叙伝」がある。 僕は其の「半自叙伝」の書き出しに、「自分は自叙伝など、少しも書きたくない」と断り書をしてゐるが、この気持は今でも変りはない。 事実、自分の半生には書くだけの波瀾も事件もないのである。僕は他の人に比べて、具象的な記憶に乏しい。たゞ「文藝春秋

文字遣い

新字旧仮名

初出

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月

底本

  • 菊池寛全集 補巻
  • 武蔵野書房
  • 1999(平成11)年2月10日