あくたがわのいんしょう
芥川の印象

冒頭文

今でこそ余程薄れたやうですが、昔は「芥川の脣」と云へば僕達の間では一寸評判のものでした。久米などはよく「芥川の脣」を噂した事がありました。芥川は御承知の通り色白の方であるのに、其の脣と云ふのが真紅で稍(やゝ)紫色を帯び非常に印象的なものでした、美女の脣のやうに妖艶で、美しいけれども少し凄艶な気のするものでした。昔の芥川を想ひ出す毎に必ず彼の脣を思ひ出します。此頃の「芥川の脣」はどんな色をして居るか

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮」1917(大正6)年10月

底本

  • 菊池寛全集 補巻
  • 武蔵野書房
  • 1999(平成11)年2月10日