がき
我鬼

冒頭文

彼は毎日電車に乗らぬ事はない。 従つて、電車内の出来事に依つて、神経をいら〳〵させられたり、些細な事から、可なり大きい不快を買つたりする事は毎度の事だつた。殊に、切符の切り方の僅かな間違などから起る車掌との不快な交渉は、勝つても負けても嫌であつた。車掌が乗客から、威丈高に云ひ込められて、不快な感情を職業柄ぢつと抑制して居る所などを見ると、彼は心から、同情せずに居られなかつたが、さて、一旦自分と

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説」1919(大正8)年3月号

底本

  • 菊池寛全集 第二巻
  • 高松市菊池寛記念館
  • 1993(平成5)年12月10日