マスク
マスク

冒頭文

見かけだけは肥って居るので、他人からは非常に頑健に思われながら、その癖(くせ)内臓と云う内臓が人並以下に脆弱(ぜいじゃく)であることは、自分自身が一番よく知って居た。 ちょっとした坂を上っても、息切れがした。階段を上っても息切れがした。新聞記者をして居たとき、諸官署(しょかんしょ)などの大きい建物の階段を駈け上ると、目ざす人の部屋へ通されても、息がはずんで、急には話を切り出すことが、出来ないこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1920(大正9)年7月号

底本

  • 菊池寛文學全集 第三巻
  • 文藝春秋新社
  • 1960(昭和35)年05月20日