あぢさい
あぢさゐ

冒頭文

駒込辺(あたり)を散策の道すがら、ふと立寄った或(ある)寺の門内で思いがけない人に出逢った。まだ鶴喜太夫(つるきだゆう)が達者で寄席へも出ていた時分だから、二十年ぢかくにもなろう。その頃折々家へも出入をした鶴沢宗吉(つるざわそうきち)という三味線ひきである。 「めずらしい処で逢うものだ。変りがなくって結構だ。」「その節はいろいろ御厄介になりました。是非一度御機嫌伺いに上らなくっちゃならないんで御

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論 第四十六年第三号」1931(昭和6)年3月1日

底本

  • 花火・来訪者 他十一篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2019(令和元)年6月14日