ぼはんのうめ
墓畔の梅

冒頭文

ふるさとの東京には、去年の秋流寓先から帰ったその日、ほんの一夜を明(あか)したばかりなので、その後は東京の町がどうなったか、何も知るよしがない。年は変って春の来るのも近くなった。何かにつけて亜米利加(アメリカ)に関することが胸底に往来する折からでもあろう。不図(ふと)わたくしは、或年(あるとし)の春、麻布広尾なる光林寺の後丘に米国通訳官ヒュースケンの墳墓をたずねたことを思出した。 ヒュースケン

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報 一万九千二百五十八号~一万九千二百六十号」1946(昭和21)年1月9日~11日

底本

  • 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2019(令和元)年8月20日