うわさばなし
噂ばなし

冒頭文

戦死したと思われていた出征者が停戦の後生きて還って来た話は、珍しくないほど随分あるらしい。中には既に再縁してしまったその妻が、先夫の生還したのに会って困っている話さえ語りつたえられている。 そういう話を聞いた時、わたくしは直(すぐ)にモーパサンの「還る人」Le Retour と題せられた短篇小説を思起(おもいおこ)した。テニソンが長篇の詩イノック、アーデンもまた同じような題材を取っていたように

文字遣い

新字新仮名

初出

「勲章」扶桑書房、1947(昭和22)年5月10日

底本

  • 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2019(令和元)年8月20日