あめりかのおもいで
亜米利加の思出

冒頭文

皆様も御存じの通り私は若い時亜米利加(アメリカ)に居たことはありますが、何しろ幾十年もむかしの事ですから、その時分の話をしてみたところで、今の世には何の用にもなりますまい。米国がいかほど自由民主の国だからと云ってその国に行って見れば義憤に堪えないことは随分ありました。社会の動勢は輿論(よろん)によって決定される事になって居ますが、その輿論には婦人の意見も加っているのですから大抵平凡浅薄で我々には堪

文字遣い

新字新仮名

初出

「新生 第一巻第二号」新生社、1945(昭和20)年12月1日

底本

  • 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2019(令和元)年8月20日