あづまばし
吾妻橋

冒頭文

一 毎夜(まいよ)吾妻橋(あずまばし)の橋だもとに佇立(たたず)み、往来(ゆきき)の人の袖を引いて遊びを勧める闇の女は、梅雨(つゆ)もあけて、あたりがいよいよ夏らしくなるにつれて、次第に多くなり、今ではどうやら十人近くにもなっているらしい。女達は毎夜のことなので、互にその名もその年齢もその住む処も知り合っている。 一同(みんな)から道(みっ)ちゃんとか道子さんとか呼ばれている円顔の目のぱっち

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論 第六十九年第三号」中央公論社、1954(昭和29)年3月1日

底本

  • 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2019(令和元)年8月20日