もりのいえ
守の家

冒頭文

実際は自分が何歳(いくつ)の時の事であったか、自分でそれを覚えて居たのではなかった。自分が四つの年の暮であったということは、後に母や姉から聞いての記憶であるらしい。 煤掃(すすは)きも済み餅搗(もちつ)きも終えて、家の中も庭のまわりも広々と綺麗(きれい)になったのが、気も浮立つ程嬉しかった。 「もう三つ寝ると正月だよ、正月が来ると坊やは五つになるのよ、えいこったろう……木っぱのよう

文字遣い

新字新仮名

初出

「アララギ」1912(明治45)年2月

底本

  • 野菊の墓
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1955(昭和30)年10月25日、1985(昭和60)年6月10日85刷改版