ヒッポドロム |
| ヒッポドロム |
冒頭文
曇天の灰白い天幕が三角型に、煉瓦(れんが)の塔の際に、これも又曇った雪ぞらのように真寂(まさび)しく張られてあった、風の激しい日で、風を胎(はら)んだ天幕の脚(あし)が、吹き上げられ、陰気な鳴りかぜが耳もとを掠(かす)めた、その隙間(すきま)に、青い空が広濶(こうかつ)とつづいていた。 真赤な肉じゅばんを着た女が、飴色(あめいろ)の馬上であきの蜻蛉(とんぼ)のような焼けた色で、くるくる廻ってい
文字遣い
新字新仮名
初出
「新小説 第廿七年第十號 九月號」春陽堂、1922(大正11)年9月1日
底本
- 性に眼覚める頃
- 新潮文庫、新潮社
- 1957(昭和32)年3月25日