おんがくどけい
音楽時計

冒頭文

階下では晩にさえなると、音楽時計が鳴りはじめた。ばらばらな音いろではあるが、静かにきいていると不思議に全(すべ)てがつながれ合った一つの唱歌をつづり合してきこえた。昨日も今夜も、毎日それがつづくのである。ネジがなくなるにしたがって、音色が次第に物憂くだるい調子になって、しまいには、まるで消えてしまうように何時(いつ)の間にか止(や)むのである。あとはしんとした小路の奥の、暗い椎(しい)の垣根をめぐ

文字遣い

新字新仮名

初出

「少女の友 第十四卷第一號」實業之日本社、1921(大正10)年1月1日

底本

  • 性に眼覚める頃
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1957(昭和32)年3月25日