だんかずおリツこそのし ――そうげいしゃかん――
檀一雄「リツ子・その死」 ――創芸社刊――

冒頭文

「リツ子・その愛」はまだ届かないので、先日お届け下さつた「その死」の方だけ只今、読み了へました。どうして、あなたは私にこの作品の感想を書かせようとなさるのでせう。私が七年前に妻を喪ひ、そのことを少しばかし作品に書いたりしてゐるからでせうか。それなら却つて、私のやうなものは、この書物を正しく解読できないのではないでせうか。私は最初の一頁から最後の二八六頁まで、絶えずこの懸念に纏ひつかれてゐました。そ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「人間」目黒書店、1950(昭和25)年6月号

底本

  • 三田文學 第九十四巻 第一二二号 夏季号
  • 三田文学会
  • 2015(平成27)年8月1日