うみのしょうひん
海の小品

冒頭文

蹠(あしうら) あたたかい渚に、蹠に触れてゴムのやうな感じのする砂地がある。踏んでゐるとまことに奇妙で、何だか海の蹠のやうだ。 宿かり じつと砂地を視てゐると、そこにもこゝにも水のあるところ、生きものはゐるのだつた。立ちどまつて、友は、匐つてゐる小さな宿かりを足の指でいぢりながら、 「見給へ、みんな荷物を背負はされてるぢやないか」と珍しげに呟く。その友にしたところで、昨夕、大きなリツクを背

文字遣い

新字旧仮名

初出

「野性」1950(昭和25)年9月

底本

  • 原民喜全詩集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2015(平成27)年7月16日