げんかくのじっけん
幻覚の実験

冒頭文

これは今から四十八年前の実験で、うそは言わぬつもりだが、余り古い話だから自分でも少し心もとない。今は単にこの種類のできごとでも、なるべく話されたままに記録しておけば、役に立つという一例として書いてみるのである。人が物を信じ得る範囲は、今よりもかつてはずっと広かったということは、こういう事実を積み重ねて、始めて客観的に明らかになって来るかと思う。 日は忘れたが、ある春の日の午前十一時前後、下総北

文字遣い

新字新仮名

初出

「旅と伝説 第九年第四号」三元社、1936(昭和11)年4月1日

底本

  • 妖怪談義
  • 講談社学術文庫、講談社
  • 1977(昭和52)年4月10日