かりねのゆめ
仮寐の夢

冒頭文

○家が焼けてから諸処方々人の家の空間(あきま)をさがして仮寐(かりね)の夢を結ぶようになって、ここに再び日本在来の家の不便を知るようになった。襖(ふすま)障子(しょうじ)を境にしている日本の家の居室には鍵のかかる処がないので、外出した後の用心をすることができない。空巣(あきす)ねらいの事はさて置き、俄雨(にわかあめ)の用心には外出のたびごとに縁側と窓の雨戸をしめて帰るとまたそれをあけなくてはならな

文字遣い

新字新仮名

初出

「新生 第二卷第七號」1946(昭和21)年7月

底本

  • 21世紀の日本人へ 永井荷風
  • 晶文社
  • 1999(平成11)年 1月30日