おばけのこえ
おばけの声

冒頭文

一 オバケ研究の専門雑誌が、最近に盛岡から出ようとしている。又宮崎県の郷土志資料には、あの地方の妖怪変化(へんげ)の目録が、先々月から連載せられている。ばけ物はもちろん至って古い世相の一つではあるが、それを観(み)ようとする態度だけがこの頃やっとのことで新しくなり始めたのである。私たちの見た所では、人が今日の問題などと珍しがるものでも、たいていは以前何度となく、だれかが考えてみたものばかりだ。今

文字遣い

新字新仮名

初出

「家庭朝日 第一巻第六号」東京朝日新聞社発行所、1931(昭和6)年8月1日

底本

  • 妖怪談義
  • 講談社学術文庫、講談社
  • 1977(昭和52)年4月10日