あき

冒頭文

霜にうたれたポプラの葉が、しほたれながらもなほ枝を離れずに、あるかないかの風にも臆病らしくそよいでゐる。苅入れを終つた燕麥畑の畦に添うて、すく〳〵と丈け高く立ちならんでゐるその木並みは、ニセコアン岳に沈んで行かうとする眞紅な夕陽の光を受けて、ねぼけたやうな緑色で深い空の色から自分自身をかぼそく區切る。その向うの荒れ果てた小さな果樹園、そこには果ばかりになつた林檎の樹が十本ばかり淋しく離れ合つて立つ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「婦女界 第二十三卷第一號」1921(大正10)年1月1日

底本

  • 有島武郎全集第八卷
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年10月20日