くうそうとしてのしんこんりょこう
空想としての新婚旅行

冒頭文

新婚旅行とは噂を聞いても歯が浮くような気がするが、僕でも女房を娶ったら、悦(うれ)しくて可愛くて、蜜月旅行(ハネムーン)を企てたくなるかも知れん。どうせ我々貧者の妻君になりたいと云う奴なら、ろくな容貌を備えていよう筈はないが、其処は人情で、自分の妻と思うと、まんざらの顔でもないような気がする。品性に於いては当世稀に見る所だ、などと、腹の中ではほく〳〵喜んでる。で、旅行となると、原稿料の前借をして、

文字遣い

新字新仮名

初出

「趣味 第二巻第五号」彩雲閣、1907(明治40)年5月1日

底本

  • 白鳥随筆 坪内祐三選
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2015(平成27)年5月8日