おおふなえきで
大船駅で

冒頭文

例年の如く詩話會の旅行をする。一時二〇分大船經過の列車で行くから、同驛にて待ち合せよといふ通知が佐藤惣之助君からきた。丁度旅行に出たいと思つてゐた矢先なので、早速同行することに決心した。 旅行の樂しさは、しかし旅の中になく後にない。旅行のいちばん好いのは、旅に出る前の氣分にある。『旅に出よう!』といふ思ひが、初夏の海風のやうに湧いてくるとき、その思ひの高まる時ほど、實際に樂しいものはないだらう

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「キング 第二卷第七號」1926(大正15)年7月号

底本

  • 萩原朔太郎全集 第八卷
  • 筑摩書房
  • 1976(昭和51)年7月25日