しへのいつだつ
詩への逸脱

冒頭文

私は嘗て詩を音樂に次ぐ最高位の藝術表現と云つたことがあつた。 凡ての藝術は表現だ。表現の焦點は象徴に於て極まる。象徴とは表現の發火點だ。表現が人間の覺官に依據して訴へ、理智に即迫して訴へようとするもどかしさを忍び得なくなつた時、已むを得ず赴くところの殿堂が即ち象徴だ。だから象徴とは、魂——若しそんな抽象的な言葉が假りに許されるなら——が自己を示現せんとする悶えである。而して詩は音樂に最も近くこ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「有島武郎個人雜誌 泉 第二卷第四號」叢文閣、1923(大正12)年4月1日

底本

  • 有島武郎全集第九卷
  • 筑摩書房
  • 1981(昭和56)年4月30日