どんてん
曇天

冒頭文

衰残(すいざん)、憔悴(しょうすい)、零落(れいらく)、失敗。これほど味(あじわ)い深く、自分の心を打つものはない。暴風(あらし)に吹きおとされた泥の上の花びらは、朝日の光に咲きかける蕾(つぼみ)の色よりも、どれほど美しく見えるであろう。捨てられた時、別れた後(のち)、自分は初めて恋の味いを知った。平家物語は日本に二ツと見られぬ不朽(ふきゅう)のエポッペエである。もしそれ、光栄ある、ナポレオンの帝

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝國文學 第拾五卷第三」大日本圖書、1909(明治42)年3月

底本

  • 21世紀の日本人へ 永井荷風
  • 晶文社
  • 1999(平成11)年1月30日