きょうじょう しだんのぎろんかにささぐ
橋上 ――詩壇の議論家に捧ぐ――

冒頭文

支那のある水郷地方。 白柳が枝をたれて、陽春の長閑かな水が、橋の下をいういうと流れてゐる。 橋の上に一人の男がたたずんでゐる。男はぼんやりと考へながら、川の流れを見つめてゐた。 「どうした? 惠子。」 さういつて一方の男が、後から肩を叩いた。男は詩人哲學者の莊子であつた。 「あれを見給へ。」 二人は默つて、しばらく水面を眺めてゐた。午後の物うげな日光が、橋の欄干にただよつてゐる。支那風

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「詩神 第二卷第一號」1926(大正15)年1月号

底本

  • 萩原朔太郎全集 第八卷
  • 筑摩書房
  • 1976(昭和51)年7月25日