むろうさいせいについて |
| 室生犀星に就いて |
冒頭文
たいていの文學者は、何かの動物に譬へられる。例へば佐藤春夫は鹿であり、芥川龍之介は狐であり、谷崎潤一郎は豹であり、辻潤は山猫の族である。ところで、同じ比喩を言ふならば、室生犀星は蝙蝠である。彼はいつでも、自分だけの暗い洞窟に隱れてゐる。彼は鷲や鷹のやうな視覺を持たない。けれども翼の觸覺からして、他の禽獸が知らないところの、微妙な空間を感覺して居る。すくなくとも彼だけの洞窟では壁の裏側に這つてる小蟲
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「春陽堂月報 第二十九號」1929(昭和4)年10月号
底本
- 萩原朔太郎全集 第八卷
- 筑摩書房
- 1976(昭和51)年7月25日