しゃきょうざっき |
| 写況雑記 |
冒頭文
目黒 前の日も、其のまた前の日も雨であった。ただの雨ではない。あらし模様の雨である。ざっと降っかけては止み、止んではまた降掛けて来る雨である。雨がやむと雲の間から青々とした空が見えて日がさす。夏の盛りに劣らぬ強い日である。啼きやんだ蝉はその度に一斉に鳴きだす。庭も家の内も共に湯気で蒸された浴室のようである。 九月初旬。二百十日を過ごして二百二十日を待ち構える頃の或日の午後である。下渋谷に住ん
文字遣い
新字新仮名
初出
目黒「明星 第一卷第一號」1921(大正10)年11月1日<br>夜帰る「明星 第一卷第二號」1921(大正10)年12月1日<br>冬至「明星 第一卷第二號」1921(大正10)年12月1日<br>落葉「明星 第一卷第三號」1922(大正11)年1月1日
底本
- 麻布襍記 ――附・自選荷風百句
- 中公文庫、中央公論新社
- 2018(平成30)年7月25日