さとう
砂糖

冒頭文

病めるが上にも年々更に新しき病を増すわたしの健康は、譬えて見れば雨の漏る古家か虫の喰った老樹の如きものであろう。雨の漏るたび壁は落ち柱は腐って行きながら古家は案外風にも吹き倒されずに立っているものである。虫にくわれた老樹の幹は年々うつろになって行きながら枯れたかと思う頃、哀れにも芽を吹く事がある。 先頃掛りつけの医者からわたしは砂糖分を含む飲食物を節減するようにとの注意を受けた。 誰が言い

文字遣い

新字新仮名

初出

「国粋 第二卷第十號」国粋出版社、1921(大正10)年10月1日

底本

  • 麻布襍記 ――附・自選荷風百句
  • 中公文庫、中央公論新社
  • 2018(平成30)年7月25日