よねんのあいだのこと
四年のあいだのこと

冒頭文

うすねずみいろの毛地のワンピースを着て、私は花束を持っている。今さっき、知合の家へあそびに行き、その庭に一ぱいあふれるように咲いていたスイートピーをすきなだけきらせてもらい、その帰りである。花はむっとした少し鼻につきすぎる位の香りで、それはこいむらさきやうすいピンクや白や各々の色より発散したものが、また一つになって新しく別なものをこしらえ私に投げかけるようだ。この香りに、何か、不思議な作用があるの

文字遣い

新字新仮名

初出

「VIKING 11号」1949(昭和24)年10月

底本

  • 幾度目かの最期
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2005(平成17)年12月10日