ラ・ベル・フィユごうのきみょうなこうかい |
| ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海 |
冒頭文
「好い船だろう、え?」 だしぬけに声をかけられて、ガルールはふと顔をあげた。彼は波止場に腰をかけて両脚をぶら垂(さ)げたまま、じっと考えこんでいたのであった。 で、顔をあげると、一人の見知らぬ男が、背(うし)ろから屈みこんで、向うに碇泊している帆船の方を頤(あご)でしゃくっていた。 「好い船だろう?」「うむ」ガルールは簡単に合槌をうった。 港は、海員の同盟罷業(ストライキ)が長びいたために、
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」1928(昭和3)年10月号
底本
- 夜鳥
- 創元推理文庫、東京創元社
- 2003(平成15)年2月14日