やみとじゃくまく
闇と寂寞

冒頭文

彼等は三人とも老ぼれ、衰えて、見るも惨めな有様であった。 女は二本の撞木杖(しゅもくづえ)にすがって、やっとのことで歩いていた。一人の男は、両手を前へ突きだして、指をひろげて、眼は堅くつぶっていた。盲目なのだ。もう一人の男は、頑固(かたくな)な相好で顔をうつむけ、身内の方々に苦しいところでもあるらしく、不安な眼つきをして、いつも黙りこんで二人のあとにとぼとぼとくっついていた。これは唖(おうし)

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1927(昭和2)年6月号

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日