むぎばたけ
麦畑

冒頭文

ジャン・マデックは、緩(ゆっ)くり調子をとってさっくさっくと鎌を打ちこんでゆくと、麦穂は末端(はし)をふるわせ、さらさらと絹ずれのような音を立てつつ素直に伏(ふせ)るのであった。 ジャンは歩調を按排(あんばい)しながら、器用な手捌きで前へ前へと刈りこんで行った。背(うし)ろには刈られたあとの畑が鳶色の地肌を現わし、そのところどころに小石原があって、褐色になった麦藁が厚く毛羽立っていた。 年

文字遣い

新字新仮名

初出

「夜鳥」春陽堂、1928(昭和3)年6月23日

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日