みひらいため
見開いた眼

冒頭文

寝床に仰向きになっていたその死人は、実に物凄い形相だった。 体はもう硬直していたが、頭髪(かみ)は逆立ち、口を歪め、唇は上反(うわぞ)って、両手で喉を掻きむしる恰好をしていた。そして小さなランプが一つ点(とも)っている薄暗い室(へや)の中に、なお生けるがごとくかっと見開いた両眼には、最後に何か恐ろしいものを目撃した恐怖の跡が、まざまざと残っていた。 その傍(そば)で、警部や警察医や刑事達に

文字遣い

新字新仮名

初出

「夜鳥」春陽堂、1928(昭和3)年6月23日

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日