なさぬこ |
| 生さぬ児 |
冒頭文
男は腰掛に腰を据え卓子(テーブル)に片肱ついて、肉汁(スープ)をさも不味(まず)そうに、一匙ずつのっそりのっそりと口へはこんでいた。 女房は炉のそばに突立って、薪架(まきだい)の上に紅(あか)く燃えてパチパチ爆(は)ねる細薪(ほそまき)をば、木履(サボ)のつま尖(さき)で蹴かえしながら頻(しき)りに何か話しかけたが、男はむっつり黙りこんでいて滅多に返事もしない。 「シャプーの家では、あの老ぼ
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」1926(大正15)年4月号
底本
- 夜鳥
- 創元推理文庫、東京創元社
- 2003(平成15)年2月14日