とうじミロン
蕩児ミロン

冒頭文

若くもなければ美人でもないあの女に、ミロンがどうしてあんなに惚(のぼ)せたのか、それは誰にもわからぬ謎であった。 ミロンはそれ以来、親友にも疎(うと)くなり、始終彼を見かけた場所へも、ぱったり顔を見せなくなった。そればかりでなく、彼は芸術のためという真摯(まじめ)な態度を棄ててしまって、下らない糊口的(くちすぎ)の絵を描きだした。 或るとき旧友の一人が彼を諫(いさ)めた。 「君は馬鹿だな

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1926(大正15)年9月号

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日