しゅうきんがかり
集金掛

冒頭文

ラヴノオは、同じ銀行に十年間も集金掛を勤めていて、模範行員と呼ばれた男であった。塵ほどの失策(あら)もなければ、只の一度だって間違った帳記(ちょうづ)けを発見されたこともなかった。 係累のない独り者で、やたらに友達をつくりもしなければ、カッフェなんかに出入りするという噂も聞かぬ。それに色恋の沙汰もなく、只もう満足してその分(ぶん)を守っているようであった。 「そんなに大金を扱っていると、さぞ

文字遣い

新字新仮名

初出

「夜鳥」春陽堂、1928(昭和3)年6月23日

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日