あきや
空家

冒頭文

錠をこじあけて屋内(なか)へ入ると、彼はその扉(と)を要心ぶかく締めきって、じっと耳を澄ました。 この家が空家(あきや)であることは前から知っていたが、今入ってみると、寂然(ひっそり)していてカタとの物音もないのと、あやめも分かぬ真の闇に、一種異様な気味わるさを感じた。一体、今夜のように、人がいてくれなければいいという願望(ねがい)と、そうした静寂の不気味さを同時に感じたということは、彼として

文字遣い

新字新仮名

初出

「夜鳥」春陽堂、1928(昭和3)年6月23日

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日