ペルゴレーズがいのさつじんじけん
ペルゴレーズ街の殺人事件

冒頭文

列車は夜闇(やみ)の中をひた走りに走っていた。 私の車室(はこ)にいた三人の乗客——老紳士と、若い男と、ごく若い女——は、誰も眠らなかった。若い女がときどき若い男に何か話しかけると、男は身振りで答えるばかりで、またひっそりと沈黙におちた。 二時頃に、速力を緩めないで或る小さな駅を素通りした。駅燈がちらと車窓(まど)をかすめると、やがて車体が転車台のところでがたがた跳(おど)ったものだから、

文字遣い

新字新仮名

初出

「夜鳥」春陽堂、1928(昭和3)年6月23日

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日