むだぼね
無駄骨

冒頭文

そのジャン・ゴオテという男は、見たところ、ちっとも危険な犯罪者らしくなかった。 年齢(とし)はちょっと見当がつかないが、弱そうな小柄の青年で、何だか子供の時分から病身で悩んで来たという風であった。ときどきそそっかしく鼻へあてる近眼鏡の蔭にさまよう眼付なんか、ほんとうに静かで柔和だった。叱られて怖々(おじおじ)している子供といった方が適当なくらいで、これが人殺しをした青年とはどうしても思えなかっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1923(大正12)年8月号

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日