ふみたば
ふみたば

冒頭文

創作家のランジェは、黙って、大きな卓机(デスク)から一束の手紙を取りだした。その文束(ふみたば)は真紅(まっか)なリボンで結(ゆわ)えてあった。 「あなたは、これが要るんですか。どうしても取りかえそうと云うんですか」 彼はおろおろ声でいった。が、マダム・ヴァンクールは何もいわずに肯(うな)ずいてみせた。 「こうした要求が男の心にどんな傷手(いたで)を負わせるかということが、あなたに解りませんか

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1926(大正15)年8月増刊号

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日