こじき
乞食

冒頭文

夜は刻々に暗くなってゆく。 一人の老ぼれた乞食が、道ばたの溝のところに立ちどまって、この一夜を野宿すべき恰好な場所を物色している。 彼はやがて、一枚のあんぺらにくるまって身を横(よこた)えると、小さな包みをば枕代りに頭の下へ押しこんだ。そのあんぺらは彼にとって殆んど外套の代用をなしているものであるし、またその包みは年中杖の尖(さき)にぶらさげて持ちあるいているのである。 彼は飢(うえ)

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1923(大正12)年8月号

底本

  • 夜鳥
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 2003(平成15)年2月14日