かえるりょうり
蛙料理

冒頭文

むぐらをわけて行くと、むやみに赤蛙がとびだす。ふとフランスで食べた蛙料理を思ひだした。 牛酪(バター)焼の蛙の脚(あし)をつまんで歯でしごくと、小鳥よりもやはらかでなんともいへぬ香気が口の中にひろがる。 「おい、蛙のソーテは乙だつたな」といふと、並んで歩いてゐた石田が、「おれもそれを考へてゐたところだ。こいつを忘れてゐたのは醜態だよ。おい、やらう」「やつてもいゝが、皮を剥ぐのはごめんだ」「脚

文字遣い

新字旧仮名

初出

「朝日新聞」朝日新聞大阪本社、1946(昭和21)年10月7日

底本

  • 定本 久生十蘭全集 6
  • 国書刊行会
  • 2010(平成22)年3月25日