スウィスにっき
スウィス日記

冒頭文

序 忘却は人間の有する最大の幸福である。私達の目まぐるしい生活が、あらゆる感情の綯(な)い交じったその日その日が、有(あ)りの儘(まま)に私達の在る限り、胸の中にたたまれてあるとしたら、それを負うて歩まねばならぬ人の運命はいかに悲惨なものだろうか。 雑然たる生活の断片を紙に残すのは、この意味に於て明らかに矛盾である。しかもそれを敢えてするのは私の過去に於てアルプスの雪の間に送った月日が、その

文字遣い

新字新仮名

初出

序「スウイス日記」横山書店、1922(大正11)年8月12日<br>「リヨン——シェネーフ」から「ラゴ・マジョーレ」まで「山岳 第十年第一号」日本山岳会、1915(大正4)年9月<br>「コモの湖」から「オーベル・ピンツガウ」まで「山岳 第十年第二号」日本山岳会、1915(大正4)年12月<br> 「ベルン」から「シュピーツ」まで「山岳 第十年第三号、第十一年第二号」日本山岳会、1916(大正5)年5月、1916(大正5)年12月

底本

  • スウィス日記
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1998(平成10)年2月15日