とざんはぼうけんなり
登山は冒険なり

冒頭文

役小角とか、行基菩薩などいう時代の、今から一千有余年の昔のことはともかく、近々三十年前位までは、大体に登山ということは、一種の冒険を意味していた。完全なテントがあるわけでなく、天気予報が聞けるでもなく、案内者という者も、土地の百姓か猟師の片手間に過ぎなかった。 で、登山の興味は、やれ気宇を豁大するとか、塵気を一掃するとか、いろいろ理屈を並べるものの、その実、誰もが恐がって果し得ない冒険を遂行す

文字遣い

新字新仮名

初出

「山 第一卷第三號」梓書房、1934(昭和9)年3月1日

底本

  • 紀行とエッセーで読む 作家の山旅
  • ヤマケイ文庫、山と渓谷社
  • 2017(平成29)年3月1日