それからそれ しょさいさんがくぶんだんぺん
それからそれ 書斎山岳文断片

冒頭文

今年の三月上旬頃、井伏鱒二の『青ヶ島大概記』を読みながら(この小説は佳作である)、私は青ヶ島という言葉を何時(いつ)かずっと前、何かで読んだことがあると思って、絶えずそれが気になった。その時は直ぐ思い出せなかったが、それから一月(つき)程後、ふと、そうだ、志賀重昂(矧川)の『日本風景論』書出(かきだし)の文句の中にあった、と思い出した。 ——「江山(こうざん)洵美(じゅんび)是(これ)吾郷(わ

文字遣い

新字新仮名

初出

「山 第一卷第七號」梓書房、1934(昭和9)年7月1日

底本

  • 紀行とエッセーで読む 作家の山旅
  • ヤマケイ文庫、山と溪谷社
  • 2017(平成29)年3月1日